pnpn
Hej.
久々の更新となりました。今回は七夕限定公開(後に9日まで延長)されていた「おやすみプンプン」について書こうと思います。時間がないので短めに。
※以下、ネタバレを含みます。
どういう漫画?
小学生だった主人公のプンプンは、転校生の愛子ちゃんに一目ぼれをしますがその恋は実らず、その後進学し様々な挫折や厳しい現実を味わい、ちっぽけな自分に悩みながら人を信じることについて考え、やがて社会人になり、作家志望の女性と親しくなり恋人未満の関係になり、心が折れそうになるたびに少しの光が差しますが何度も失敗し、ひょんなことから愛子ちゃんと再会し結ばれますが、結局離別し漫画家になった女性たちと平凡な人生を送っていくという話。
作風としては、絵がかなり凝っていて、特に風景の描写は非常に細かいです。人の表情の描き方は鬱漫画特有のものを感じました。似た漫画をどこかで見たような……。
また、かなり誇張された人やエキセントリックな表現が頻発します。周りの関係の薄い人たちはしばしば気持ち悪く描かれる他、「うんこ星人」や「かみさま」など、おそらくキャラクターの空想上の存在もそこにあるものとして描かれたり、きわめて抽象的・概念的な表現・イラストが挿入されることがあります。後者については主にプンプンの頭の中を表現する際に多用されます。
最大の特徴ともいえるのがプンプン一家です。エジプト神話のメジェドのようなイラストで代替されていますが、実際にその姿なのではなく、本当は人の姿をしていることが、時々出てくる人型のシルエットによってわかります。特にプンプンに関しては場面によってフォルムが変化します。また、プンプンは吹き出しで話さず、常に地の文で話します。これが、プンプンの本当の考えや表情を読者にもわかりにくくしています。
話のプロットとしては、家族が離れ離れになったり、好きな人に彼氏がいたり、仲のいい人が事故に遭ったりと、辛い展開が多いです。プンプンは元々平凡な子供であり、失恋したり人づきあいが苦手だったり努力が報われなかったりします。このキャラクターと周囲の環境の不条理さが、漫画にリアリティを与えています。
プンプンの周囲の人物のサブストーリーもありますが、これも全般的にうまくいっていないことが多いです。
感想
なかなか評価が難しい作品でした。鬱度合いでいけばタコピーの方がきつかったと思います。何を伝えたかったかを雑に考察すれば、人はそれぞれ大変なことがあって、それでも頑張って生きていこう、みたいなことだと思います。
しかし不器用な人たちが不器用なまま、特に正解を見出すことなく終わるので、結論はかなり見えにくいと言えるでしょう。解釈の可能性が大いにあるので、人とこの漫画の感想を共有するのが楽しそうです。
最後は小学生がまたプンプンたちと同じようなことを考えているという描写で終わるので、まとめるならやはり人生こんなもんだという解釈がさしあたり妥当なのではないでしょうか。
すっと終わる一方で、愛子ちゃんに関する後味の悪さが残り、これをどう評価するかがポイントになりそうです。愛子ちゃんは終盤に登場してから一気に急展開するので、かなりあっけなさがあります。その後の人生でプンプンが愛子ちゃんのことをどう考えて生きていくのかを考えてみましょう。また、うんこ星人、最後のプンプンの涙、晴見くんについても考察の余地があります。
別に人におすすめはしないけど、つまらなかったということもなく、なんとも言えないです。プンプンは幸せになってほしいですが、人にはそこそこ恵まれているのだからもっと早く気付くべきだったとも思います。無責任だという誹りも免れません。愛子ちゃんがかわいそうです。
この漫画が好きな人は純文学にもっとえげつないのがたくさんあると思いますよ。一方で表現のおもしろさはこの漫画の評価すべき点でしょうね。プンプンの純粋な心がどう変化していくかがかなり追いやすくなっています。
世間の評価
ツイートをいくつかピックアップします。
おやすみプンプン、マジで読むにあたりこの注意書き欲しいレベル pic.twitter.com/4bHXf1Rm9q
— めでぃ (@Indigo_Medy) 2023年7月6日
それはどの漫画についても言えるのでは? ただし性描写は確かに激しめです。
おやすみプンプンの”子供の頃の一瞬で急激に仲良くなってその後離れた相手を人生ぶっ潰す勢いで引き摺る”設定、マジで吐きそうになるレベルで人生だ
— 月乃万次郎 (@Omancocat) 2023年7月6日
これはありますね。プンプンはかなりメンヘラで、しっかり引きずります。ここは少し共感できました。
おやすみプンプンは確実に感受性が豊かな中高生の時に読むべきだがその時期に読むとその後の人格に支障をきたすことも確実な漫画
— 使用 (@usezz2) 2023年7月8日
これを高校生の頃に読んでもあまり現実味が沸かないのではないでしょうか。その意味で、別に感受性が豊かな時期に読むべきというわけでもないと思います。万人にすすめられる漫画ではないと思いますし。そして漫画で人格に支障をきたさないでください。
人間失格を読んだくらいで、おやすみプンプンを全巻読んだくらいで、お前の陰鬱はフィクションなんかでは癒されないことを知り、陰鬱が美化されるのはフィクションの中だけだと知るだけで、でも陰鬱でいるのは気持ちよくて、メンヘラのツラをするのは20歳くらいまででやめとけってのにな
— ❤︎あむちゃんねる❤︎ (@lovelyAngel_00) 2023年7月6日
おやすみプンプン読んで楽しめるのは二軍中位ぐらいの、「オレ陰キャなんだよ〜笑」みたいな自虐を高頻度で擦りつつも(自分は結構イケてる)と思っていて、露悪趣味とリアリズムを混同したチンカスだけです。
— ジャベリューン (@javeleun) 2023年7月8日
そういったチンカスへのターゲティングが、おやすみプンプンの優れたところです。
しっかりディスられていますね。そういう評価がされそうな内容ではありますが、人の趣味をバカにするのはいい趣味だとは言えないですね。
おやすみプンプンは異質さ故に素晴らしい漫画だと思う一方で、「異質な物が好きな自分」のアイコンとして用いられがちで、多くの人はその思想を「痛さ」として捉えるので、色々な漫画を読んで「何故その異質さを自分が大切に感じたのか」を整理して、その理解を心の中にしまう程度が望ましいの意図です
— 雲野 (@unno_pdf) 2023年7月6日
こちらのツイートがいいことを言っています。なぜその評価をしたのかということを言語化せずにこの漫画が好きと言ってしまうと異常者気取りと揶揄されても反論できません。とはいえこのブログも感想がよくわからないことになっていますが。
まあこういう漫画体験もありかなーと思いました。明日は面接があるのでこのへんで。
Hejdå.