生活の気づき

tl;dr ドラクエをしよう!

 

 Bonsoir. Comment allez-vous? 最近はDuolingoをやりすぎて日本語を話している時間よりフランス語を話している時間のほうが長くなっています。今日なんか2時間もやっててさすがに驚きました。ただでさえ時間が足りていないのにDuolingoに2時間!一応語学学習とはいえ勉強とゲームの間みたいな立ち位置ですからね……。

 時間がないで言うと、最近妙に眠いんですよね。春眠暁を覚えずとも言いますが、起きている時間が減るのは普通に困ります。花粉症のせいなのか抗アレルギー薬のせいなのか、ともかく意識的に生活リズムを整える必要がありそうです。今日も昼過ぎまで寝てしまったので今夜は起きておこうかな~という気分になっています(どうせ寝るんでしょうけど)。

 良い睡眠には適度な運動が効果的であることはみなさんもご存じの通りです。最近わたしは以前の記事でも言及したようにジムに登録しました。ジムすごいですね、今も全身筋肉痛ですよ。今日は夜が更けてから研究室に行って、サウナだけ入りに行こうかな~なんて思っていたら時計を一時間見間違えていてもう営業時間内に間に合わない時間でした。悲しい。

 

 ということでジムはあきらめて今は本を読んでいました。「現代思想入門」という本です。なかなかおもしろいですね。みなさん、最近脱構築してますか?試しにここでゲームについて脱構築を試みましょう(読みかじりの知識なので正確性はあてにしないでください)。

 先ほど述べたようにDuolingoはゲームのようなもので、わたしの場合「ただでさえ時間がないのにゲームなんかしている暇はない」というひとつの命題があります。なぜゲーム”なんか”と言われてしまうのかというと、もちろんゲームは「役に立たない」「優先順位が低い」という共通認識ともいえる前提があるからです。

 これについて改めて考えてみます。今挙げた二つの述語には「人生において」あるいは「自分にとって」という前置きが成立します。そこで「人生にとって非本質的である」と言い換えてみます。では本質的なものとは、と考えてみると、おそらく勉強・仕事や家庭での時間などになってくるでしょう。デリダ的に言えば、ゲームがエクリチュールで勉強や仕事がパロールということになります。未読の方のために補足すると、これらのタームは文字言語=écritureよりも音声言語=paroleの方が本質的だという発想から採られたものだそうです。参考書で文字を読んでもわからないが同じ内容の授業を受けてみるとわかるといったこともあります。*1文字のない言語はあっても逆はないように、言語の発生も音声が先ですよね。

 さて、では「ゲームは非本質的である」という命題は正しいでしょうか?そうとも限らなそうです。例えばDuolingoはゲームを楽しみながら外国語を学習することができ、なかなか英語から卒業できないわたしがなんとかフランス語との繋がりを保つための大事な存在になってきています(繋がりすぎて英語を勉強するのを忘れてしまいそうなほど。今日TOEICの結果を見たら微妙だったので気を引き締めなければ……)。

 しかしこれはレアなケースで、一般化するわけにはいきませんね。最下位がアイテムボックスに差し掛かるタイミングで無敵アイテムを使ってサンダーを回避したり、グライダーの間だけジャイロ操作をオンにしたり、トリプルキノコでスターを運搬して打開したりするのは非本質的だと唾棄すべきものでしょうか。

 そんなことはない、と言いたいし、言えると思います。ゲームがどれだけ人の人生を豊かにし得るかは計り知れません。ゲームを通じた人との繋がりは幼少期であれば友人と会話する上での必須教養にすらなり得ますし、ネット全盛の今であればオンライン上での人間関係を築く一助になります。人間関係に限ったことではなく、オフラインで完結するRPGに心打たれ、それが人生の支えになるということが起きます。

 かくいうわたしも、やってきたゲームの数こそさほど多くないですが、いざ始めた時ののめりこみ方は尋常ではなく、特に「ドラゴンクエスト」(以下ドラクエ)シリーズがなければ今のわたしはなかったでしょう。幼稚園の頃からドラクエに触れていたので比較的早い段階から読み書きができ、ドラクエの音楽に啓発されクラシック音楽に食指が動き、これ以外にも優れたストーリー・音楽・デザインがわたしの人生に与えた影響は計り知れません。人生で一番力を入れたことはドラクエであり、すぎやま先生の指揮による「ドラゴンクエストの世界」を聞きに行けなかったことが人生における大きな後悔の一つです。ドラクエはわたしの原体験であり人生の指針であり、生き方に困ったらドラクエに聞けばいいと思っているし、ドラクエの魅力を一人でも多くの人に伝えたいし、ドラクエのような素晴らしいコンテンツをわたしもいつか作りたいと思っています。今の楽しみは月末のドラゴンクエストコンサートで、この前の5/5にも聞きに行きました。この世で一番有意義なお金の使い方の一つです。ドラクエがわたしの人生の一部なのではなく、わたしの存在そのものがドラクエに包摂されていると考えています。

 今日ドラクエのストーリーを見直したのもあって、ドラクエへの愛が溢れすぎました*2。長々と述べてきましたが、これは最近ではもう目新しい視点ではないですね。e-sportsは黎明期を脱しつつあり*3、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」の内容が波紋を呼ぶ昨今の現状を鑑みても、「否」と答えるのが標準化してきていると言えます*4

 さらに、遊びという大きな括りで見れば、"All work and no play makes Jack a dull boy."とは大昔から言われていることで、遊びが発想を豊かにし人間を人間たらしめるとも言えます。書店で適当にビジネス書・自己啓発本を手に取ればかなりの確率で「遊びが大事」という主張に出くわすことでしょう。例えば発想の遊び・飛躍に関して、SFプロトタイピングについて書かれた「未来は予測するものではなく創造するものである」を読んでみてください*5

 加えて現在、ブームは過ぎつつありますが、機械学習人工知能技術の進歩により様々なものが自動化され、多くの職業が数年後・数十年後には消滅するともいわれている中で、芸術や娯楽に人間らしさを見出すという視点もあるでしょう。これからはエンタメや!とホリエモンも言っていました*6

 そもそもたった一度の人生を仕事に捧げるというのもどうなんでしょうね。これは働き始めないとわからないかもしれないので沈黙することにしますが、ともかく以上が脱構築に関する長すぎる例であり、ここではゲームがパルマコン(有益でも有害でもありうる物)的に扱われています。

 ところで、パロール(音声言語)の優位性に関連して、外国語学習でも音声を重視すべきだというある種のイデオロギーが存在し、近年では「英語のハノン」などがその代表例と言えるでしょう。なかなか大変そうですが、それでも英語を話せるようになりたい方におすすめです*7。スピーキングの練習法としては他にも例文暗記、瞬間英作文、音読、反訳・復文など様々なものがあり、教育関係者や文学者など専門家の間でその有効性について日々議論が繰り広げられています*8。我々学習者としてはさっさと結論を出してほしいものですが、それを待ってもいられないので個人的には色々やってみるのがいいかと思います。そもそも勉強法に絶対的な結論を求めるのも安易な考え方であって、例えば某今でしょ先生は、人には勉強の仕方にも人によって向き不向きがあるから自分に合った勉強の仕方を模索すべきだとして、音読一辺倒の英語教師をこき下ろしていました(わたしは音読はした方がいいと思っています)*9。この辺りはドゥルーズが「アンチ・オイディプス」で批判した内容にも繋がります。

ドゥルーズガタリの思想は、外から半ば強制的に与えられるモデルに身を預けるのではなく、多様な関係のなかでいろんなチャレンジをして自分で準安定状態を作り出していけ、ということだと言えるでしょう。千葉雅也(2022)「現代思想入門」p.71

 ポストモダンにおいては、「大きな物語」が失われた、という表現があるそうです。これは価値観が多様化し、共通の理想が失われたことを言います。例えば少し前までは一軒家を買って車を買うというのが一つのゴールのように捉えられていたのが、今では「タワマン」に取って代わられたりカーリース・カーシェアが登場したりしています。さらに進んで、「タワマン」については「本当にわかっている人は低層階」という見方も出てきています。

個人的には高いところに住む価値がよくわからない。外出に5分かかるわずらわしさのほうが大きい。cis(2018)「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」p.93*10

そもそも当時は高度経済成長期の頑張れば頑張るだけの成果が出るような時代だったということもあり、今では働き方に対する価値観にも多様化がみられます。先に述べた「一生を仕事に捧げるべきか」という話がまさしくそれで、ワークライフバランスという概念は昔にはありませんでした。このような状況に対し理論化を試み、脱構築等の概念を用いて多様性と向き合い、新たな方向性を示したのが現代思想と言えます。

 一つの価値観を押し付けられるよりは価値観が多様化した方がはるかにマシで、エマ・ワトソンの国連スピーチにもあるように、それによって自由に生きられるようになる人(主にマイノリティの人々)も多いはずです。このご時世ではもはやそれは当たり前のことで、それ自体が一つの新しい価値観となっています(落合陽一がさらに一歩進んで「多様性を認めない人がいるのもまた多様性だ」と言っていました。スピノザで出てきた「観念の観念」を思い出します)。一方で、弊害もあります。例えば野球部に「本気で野球をやって大会で勝ちたい」という人と「野球を楽しくやりたいだけできついトレーニングはしたくない」という人がいては、前者だけが集まった強豪校に勝つのはかなり厳しいでしょう。もちろん後者の考え方が悪いわけではなく認められるべきなのですが、共存するのは難しいと思われます。このように、共通のゴールがなければ「船頭多くして船山に上る」といったようにどこにも向かえないということがあり得ます。ゴールを明確にしておくことはマネジメントにおいて極めて重要です。ただし、「ゴールを明確にする=価値観を押し付ける」ではないことは改めて強調しなければなりません。これが組織運営の難しさでもあります。こういったことにも現代思想の考え方は援用できるのかも知れません。哲学はちゃんと咀嚼すれば実用的な武器になるのです。

 以前、価値観の押し付けが一定数存在した時代では、自分の価値観が否定され苦しんだ人がいる一方で、人生の方向を勝手に決められたことである種助かっていた受動的な人もいました。現在そういう人に目をつけて成り立っているのが自己啓発の類ですね。自己啓発本はわたしも時々読みますが、よく選んで買わないと本当にくだらない内容の、同じこと・既に知っていることを書いた本が多いです(体感95%)。どうせ「考え方」の本を読むなら哲学書を読んだ方が内容の濃さが違いますからよいです。自己啓発で言われていることは哲学の内容をよくよくすりつぶしてそれにフィルターをかけて残ったごくわずかな残りかすを薄く引き伸ばしたものだと思ってください。生き方というのに答えはなく、したがって教えてもらうものでもなく、それは先ほど引用したように自分で見つけていくものだという意識を持ちましょう。

 価値観の押し付けとは少し違いますが、昔は宗教が力を持ち、その教えに従えば幸せになれると多くの人が信じ、それをよりどころにしていました。

宗教が力を持っていた時代であれば、まだ救いもあったでしょう。神の教えこそが真理であり、世界であり、すべてだった。その教えに従ってさえいれば、考えるべき課題も少なかった。しかし宗教は力を失い、いまや神への信仰も形骸化しています。頼れるものがなにもないまま、誰もが不安に打ち震え、猜疑心に凝り固まっている。みんな自分のことだけを考えて生きている。それが現代の社会というものです。岸見一郎、古賀史健(2013)「嫌われる勇気」p.4

上の引用はベストセラーになった「嫌われる勇気」からの引用です。本書ではこれが悩める青年によって提示された後、哲人が「世界はシンプルであり、人生もまたシンプルです」と返します。現代思想は多様化する価値観を肯定しますが、こちらは失われた共通の幸福についてアドラー心理学による定義を与え、脱構築とは異なるコペルニクス的転回を試みます。興味があれば読んでみてください。もっとも、これも数ある考え方の一つであることをお忘れなく。

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 宗教がかつてどれだけ力を持っていたかについては世界史を紐解けば明らかです。その時代は、現代ほど複雑怪奇な社会ではないのもありやはり人々の心も現代よりは安定していたのだと思います。そのような時代の方がきっと生き方は簡単で、わたしは人生に疲れてふと中世に思いを馳せることがあります。そんな昔から多くの人に大切にされてきた宗教には学ぶことが多いと思っています。先ほどは哲学の本を読もうと言いましたが、孔子ブッダなど宗教関連の本もおすすめしておきます。

 宗教が人々にもたらす心の平穏に似たものを、「僕のヒーローアカデミア」に感じます。平和の象徴であるオールマイトの存在が、人々の暮らしを精神的に支えていることが描写されています。しかしその象徴が失われたとき、世間が大混乱に陥ることは避けられません。なにか一つのものに依存するというのは脆いものなのです。例えば恋人にどっぷり依存する人がいます。恋人の存在は精神面を大きく支えることは間違いありませんが、恋人がいないと生きていけないというようではリスクが大きすぎます。自分の機嫌は自分で取り、自信をつけ、自分自身で自己肯定感を生み出しましょう。そして自分の中に、自分だけの心のよりどころとなる大切なもの(できれば複数)があると安心です。そこに恋人がいればさらに幸せですね。ヒロアカはこれ以外にもいろいろ考えさせれる場面があり、ストーリー自体も面白いのでおすすめです。アニメ6期がこの秋放送予定です。ちなみにわたしは4期まで見ました。

 

 現代思想入門の初めの二章までの内容でもう4時半になってしまいました。今日(?)は寝れなくても別にいいと思っていたので問題ないとはいえちょっとびっくりです。どうせ寝るんでしょうと書いていた時はまだ普通の時刻だったのです。ここからが本題のつもりだったのですが本紹介が大作になってしまったのでこちらを本編にしてしまうことにします。長い割に内容は薄かったでしょう。濃い内容を求める方は実際に読んでみてください。今回の内容も、例えば「(自己啓発本などで)生き方を規定されることに自覚的になり自分のスタイルを確立すべし」というように、本を読んでいろんな気づきを得たことが発端ですが、タイトルの「生活の気づき」で本当に言いたかったことについては次回をお楽しみに。ということで現代思想入門、未読の方はぜひ。わたしも読んでいきます。(その前に研究室の発表スライドを……)

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追記:本編を書きました

sonorite3400.hatenadiary.jp

 

*1:これについては集中力の差もあるかもしれません。

*2:ちなみにおすすめの順番は5,1,2,3,8,11,4,6,7です(9と10はできてない泣)

*3:わたしの友人は卒業研究でe-sportsに関することをやると言っていました。昨日ランニングマシーンで見ていたQさま!!ではe-sportsの実況キャスターが解答していました。

*4:もちろん、幼少期にゲームにのめりこむことを防ぐことでよい成績を目指せるという意見もあり、特に進学校出身の人にはそういう人が多そうです。

*5:未来は予測するものではなく創造するものである ――考える自由を取り戻すための〈SF思考〉 (単行本) | 樋口 恭介 |本 | 通販

*6:10年後の仕事図鑑 | 堀江 貴文, 落合 陽一 |本 | 通販

*7:Amazon - 英語のハノン 初級 ――スピーキングのためのやりなおし英文法スーパードリル (単行本) | 横山 雅彦, 中村 佐知子 |本 | 通販

*8:ちなみに、スタディサプリの某神授業先生は毎回袋叩きにされている気がします。

*9:ただし本当に何からやればいいかわからない人や、定期試験はできるけど実力試験で失敗するタイプの人は勉強の仕方を調べて見直した方がいいと思います。例えば以下の書籍:

Amazon.co.jp - 独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法 | 読書猿 |本 | 通販

*10:Amazon.co.jp - 一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学 | cis |本 | 通販